象牙の塔へのあこがれ


先日、大学時代の恩師にお会いした。

お元気そうで何よりだったし、お話しされる姿は当時のままでとても懐かしく感じられた。

先生はあと数年で定年退職されるらしく、これから大学院に入り自分のポストに収まらないかと私に勧めてくださった。おおかた冗談だろうし、数年で先生の域に達するなんて土台無理な話だ。けれど、そうおっしゃっていただいたことに甚く感激した。本気で大学院に進み、研究職の道を歩みたいと考えたくらい素敵な提案だ。

 

研究職にあこがれる理由は何もそれだけではない。森博嗣氏の小説『喜嶋先生の静かな世界』にも素晴らしい研究者が登場する。主人公は深遠な学問の世界にいざなわれ、没頭していく。


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大学院生の日々を描いた教養小説かと思いきや、森博嗣らしいラストでガツンとやられる。何度も読み返しているお気に入り。

この小説に出会えたおかげで先生とも出会えたと言っても過言ではない。

 

大学院など、アカデミーな分野に身を置く機関を「象牙の塔」という。現実逃避するようなニュアンスがこもった皮肉的な呼称だが、惹きつけられる響きである。ああ、象牙の塔にこもりたい。そして文学や言語学に関わる研究をいつまでもしていたいなあ。

 

最近、「ゆる言語学ラジオ」というYouTubeチャンネルの動画にどハマリしている。言語学を中心に、二人のパーソナリティが専門的な話をわかりやすい対話形式でゆるーく繰り広げられるのだが、その掛け合いが本当に面白くて好きだ。ときどき在野の研究者がゲストで登場しガチな話になることもある。たいがい置いてきぼりになるのだが、それすらも楽しい。

こうやって手軽に知的好奇心を満たせるというのはこの上ない喜びである。だけどもっと早く、例えば高校生時代にこういうコンテンツに出会えていれば、もっと違った人生を歩んでいたのかもしれない。ただ、過去を悔やんでも仕方ないから、これからどんな道に進もうかと考えるばかりだ。

 

象牙の塔の門戸を叩くか、ちいかわになりたい。


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